香港と日本の会社法の違いとは?主な相違点と共通点

香港でビジネスを始める際、それぞれの国の法律を知っておくことはとても大切です。特に、会社法は会社の立ち上げから日々の運営、そして清算に至るまで、その活動の全てに関わるため、日本と香港それぞれ会社法の違いを理解しておくことが欠かせません。地理的にも近く、経済的なつながりも深い日本と香港ですが、会社法にはそれぞれの国ならではの特徴があります。今回は、香港と日本の会社法を比べ、それぞれの相違点と共通点をご紹介していきます。

まず、会社法における会社の種類から見ていきましょう。日本では、主に株式会社と、合名会社、合資会社、合同会社といった持分会社の4種類があります。特に株式会社は広く利用されています。株式会社の大きな特徴は、株主が自分が投資した金額以上の責任を負わない「有限責任」であること。これにより、たくさんの投資家から資金を集めやすくなっています。一方、香港では「責任有限会社」が主流です。これも、株主の責任が出資した金額に限られるという点で、日本の株式会社と似ています。香港の責任有限会社は、さらに「株式有限責任会社」と「保証有限責任会社」に分かれますが、一般的に株式有限責任会社で設立されるので、実質的には日本の株式会社とほとんど同じだと考えて良いでしょう。

次に、会社設立の手続きや必要な条件を見ていくと、いくつか異なる点があります。日本で株式会社を設立するには、まず会社の規則(定款)を作り、それを公証役場で認証してもらう必要があります。その後、会社のお金(資本金)を払い込み、法務局に登記の申請をする、という流れになります。現在は最低資本金制度がなくなったので、極端な話、1円からでも会社を設立できますが、実際には事業に必要な資金を用意することが求められます。一方で香港では、会社の名前を決め、定款を作り、そして株主や取締役、資本金などの情報を登記局に提出することで会社を設立できます。香港での会社設立で特徴的なのは、最低資本金が1香港ドルからと非常に低く設定されていること、そして「会社秘書役」という特別な役割の人が必ず必要になることです。この会社秘書役は、会社の法律で決められた帳簿の管理や、毎年更新する手続きなど、香港の会社法に基づいたさまざまな事務作業を代行します。香港に住んでいる個人か、許可を得た法人がこの役割を担うことができ、これは日本にはない制度になり、香港での会社の運営において、法律をきちんと守るために大切な役割を果たしています。

また、会社の組織の作り方にも違いがあります。日本の株式会社では、株主総会が会社の最も重要な意思決定機関で、取締役会は日々の業務の決定や取締役の仕事ぶりを監督します。会社によっては、監査役を置いたり、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社など、会社の規模や特徴に合わせて様々な組織設計を選ぶことができます。これに対して、香港の上場会社は、イギリスと同じように「一層式」(unitary board)という形を取っており、取締役会が業務の実行と監督の両方を担うのが一般的です。監査委員会を置くかどうかは会社が選べますが、もし置く場合は監査役を置くことはできません。また、監査委員は3人以上で、その3分の2以上が会社の外の独立した人である必要があるなど、独立性が重視されています。香港では、大きな株主がいる上場会社がとても多いため、少数株主を保護する観点から、外部の立場からきちんと監督する機能を強めていると言えるでしょう。

税金の面でも、両国の会社法を比較する上で見逃せないポイントです。香港は、所得が発生した場所を基準に税金がかかるという、非常にシンプルで効率的な税制をとっています。一部の事業を除いて許認可もいらないため、多くの国際的な会社にとって魅力的なビジネスの拠点となっています。特に、海外で得た所得については原則として税金がかからない「源泉地主義課税」を採用している点が大きな魅力で、これが香港を国際貿易や投資の中心地として発展させてきた理由の一つとも言えます。一方、日本は、世界中で得た所得に対して税金がかかる「居住地主義課税」を原則としており、法人税率やさまざまな税制度において香港とは異なる体系を持っています。ですから、国際的な事業展開を考える際には、両国の税制をしっかり比較検討し、適切な事業形態や所在地を選ぶことが、税金負担を最適化するという点からも重要になります。

このように、香港と日本の会社法は、基本的な考え方や目指す目的において共通する部分もたくさんありますが、会社法の具体的な制度の設計や運用においては、それぞれの歴史的背景、経済の仕組み、そして国際的な役割を反映したさまざまな違いがあります。例えば、有限責任の原則や、株主総会が一番大切な意思決定機関であるという点では共通していますが、会社秘書役の設置義務や、一層式取締役会、そして源泉地主義課税といった香港ならではの制度は、日本とは異なるビジネス環境を提供しています。これらの違いをしっかり把握することは、日本と香港でビジネスを展開しようとする会社にとって、法律的なリスクを減らし、事業を成功させるための重要なポイントとなるでしょう。

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